夢を乗せて大空へ羽ばたく――夢を乗せて大空へ羽ばたく――

夢を乗せて
大空へ羽ばたく――
加賀産業株式会社 専務取締役
辻川 仁 さん

加賀産業株式会社は、名古屋市に本社を構え、航空宇宙事業・ヘルメット事業・建産機事業を展開。150社以上にも及ぶ協力会社との強固なネットワークを武器に、工場という製造現場を持たないメーカー「ファブレス企業」として、企業価値を築き上げています。
同社では、フットサル選手・武田侑也さんを正社員として雇用。現役アスリートを採用している理由や現状について、お話しを聞きました。

大空を飛ぶ航空機を支える企業が、夢を追う人の背中を後押し

大空を飛ぶ航空機を支える企業が、夢を追う人の背中を後押し

―武田選手の活躍をうかがう前に、まず加賀産業のことをご紹介いただけますか?

加賀産業が手がけるのは、航空宇宙分野をメインにした部品づくりをしています。航空機やロケット、防衛品などを作っている会社です。
部品設計から品質保証までのトータルサポートを行っていて、名古屋本社のほか、岐阜、横浜、小松、宇都宮に拠点を広げています。

―世界の大空へ羽ばたく航空機。夢がありますね。

ボーイング787では、初号機から最新機に至るまで製造に携わっています。航空機は部品点数が多いのが特徴ですが、同機で私たちが携わっているのは主に主翼や中央翼の部分。
航空宇宙カンパニーである大手重工業メーカーのパートナー企業として、大空を羽ばたく航空機づくりの一翼を担います。人々の想いを乗せて、世界中を飛ぶ航空機づくりを支えると思うと嬉しいですね。

―加賀産業では広島の拠点で、フットサル選手の武田さんを雇用していますが、そのきっかけは?

武田を採用したのは2年ほど前になります。武田は広島のフットサルチーム「広島F・DO」に所属していて、入社前はフットサルの練習時間と金銭面で不安を抱えていたと聞きました。
名古屋に本社のある加賀産業と武田がご縁を持てたのは、私が個人的にお付き合いのある名古屋のフットサルチーム代表の紹介によるもの。名古屋のフットサルチーム代表を通じて、「広島F・DO」代表と関係性が生まれ、「広島でぜひおすすめしたい人材がいる」と紹介を受けました。広島の拠点を広げるために人材を探していた当社では、まさに渡りに船の申し出でしたね。

―アスリートを採用するのに、雇用面でネックはありましたか?

いいえ、特にありません。…と言うのは、当社は以前から名古屋でサッカーのクラブチームの選手を採用していて、アスリートを雇用することは特別なものではないんです。
世間的にはプロと呼ばれる選手でも、実際はスポーツだけでは満足に生活していけないのが現実。スポーツを諦めずに、仕事を見つけたいと思う人の支援をしたい。当社のそうした思いは、以前からある風土なんですよ。

―アスリート採用の実績が豊富ですね。採用時に、何か気を配ることはありますか?

当社の場合、アスリートを採用するからといって、規則を変えることはありません。あくまでも週5勤務で働くことを前提とした採用になります。
武田を採用する前は、本人はもちろん、広島F・DOのチーム代表と話をする機会を設けました。代表との決め事は、「正社員として雇用を守ること」と「夜の練習に差し支えない勤務時間を守ること」の2つ。
実際、武田にはフルタイムで働いてもらっていて、フットサル練習の開始時間に間に合うように、業務時間など調整しています。アスリートの採用時には、仕事とスポーツの両立が可能かを両者で話し合うと安心かもしれませんね。

雇用条件は通常通り。正社員としての雇用――

雇用条件は通常通り。正社員としての雇用

―現在、武田選手はどんな形態で働いているのでしょうか?

先ほども述べましたが、武田には「原則平日週5勤務で朝から夕方までの日勤のフルタイム」で働いてもらっています。
フットサル選手はフルタイムで働いて、夜か日中に練習をする人が多いみたいですね。アスリートにとって競技と仕事の両立は、時間と固定収入がポイントになるようです。日中に練習をするチームでは、夜勤の仕事を探す人もいるようですね。
仕事が休みの土日は、フットサルの試合日。平日の仕事終わりはチームで練習をしていて、「武田は本当にタフだな」と感心しますよ。

―フルタイム勤務で、フットサルと仕事の両立は難しそうですが…

実は武田の職場の同僚にもお客様にも、武田が『デュアルキャリア』を続けていることは伝えていて、みんなは理解を示してくれています。なので、平日に残業になるようなことがあっても、フットサルの練習に間に合うように調整したり、フットサルの試合の前日は夕方前から休みを取ったりと、柔軟な働き方をしており年間を通して調整しています。
また試合は土日が多いですが、平日の試合の時は、もちろん試合を優先。その日は有給休暇を適用しています。試合は予めスケジュールが決まっていますし、平日の勤務体系を調整することは、会社として全然難しいことではありません。

―仕事もフットサルも頑張る武田選手。やっぱり応援したいですよね。

そりゃ、もちろんそうですよ。今は広島F・DOは、日本フットサルリーグのF2リーグ。上位リーグであるF1リーグを目指して、頑張っているところです。
私も武田が出ている試合を見に行ったことがあるのですが、もう選手の動きが早くて早くて。手に汗握る展開に夢中になってしまいました(笑)。
F1リーグに上がると、名古屋での試合が増えますし、名古屋本社のメンバーとも観戦に行きやすくなりますね。

―アスリートを仲間に迎えた、職場のメンバーの反応はどうですか?

武田と初めて会った時に驚いたのは、明るくてコミュニケーション上手で個性的…という彼の人柄。その明るさは天性のものなのか、職場の同僚ともすごく関係性がいいですし、お客様からも「いつも元気でいいね!」と好評なんです。アスリートを雇用して、会社が武田を支えているつもりが、今は武田に会社を支えてもらっている状態…と言っても、大げさではないですね。
そんな元気印の武田が職場にいるからか、職場のメンバーたちもすっかり明るくなっていますね。広島のメンバーはフットサルの試合に応援に行っていますよ。

こんなに活躍してくれるとは!嬉しい予想外――

こんなに活躍してくれるとは!嬉しい予想外

―武田さんは、どんな仕事をしているのですか?

武田には取引先である三菱重工業の広島製作所にて、うちのメンバーと一緒に働いてもらっています。品質保証が所属部署で、これから運行を開始する次世代大型機ボーイング777Xに仕事で携わることも。新しい航空機のプロジェクトで、武田もモチベーション高く仕事をしていますよ。

―お客様からも評判の武田選手。彼の強みとは?

そうですね。彼のいいところは幾つもありますが、挙げるとするならば、「チームプレーを大切にできること」「礼儀正しいこと」「空気を読めること」ですかね。チームワークが大切なフットサルという競技を通じてか、武田のコミュニケーションの取り方には全然心配がないですね。
もともとは現場で働く人材ニーズがあったから、武田を採用したのですが、当時の予想をはるかに超えて、お客様と話ができるなど彼の活躍には目を見張ります。正直、ここまで活躍してくれるとは思っていなかったです。嬉しい驚きですね。

―名古屋が本社ですが、武田選手と会う機会はありますか?

はい。もちろんありますよ。私は名古屋から定期的に他県の事業所に訪れるようにしています。武田が入社してからというもの、広島のメンバーに活気が生まれ、私も訪問するのがより楽しみになりました。武田はいつ顔を合わせても元気いっぱいで、フットサルでの活躍はもちろん、いつかは広島を引っ張るようなリーダー職になってくれたらと願っています。

会社の少しの融通で、競技との両立が可能に――

会社の少しの融通で、競技との両立が可能に

―仕事とスポーツを両立する『デュアルキャリア』に対する思いとは?

私自身、高校時代にサッカーをしていた経験があり、アスリートに親近感を持っています。武田は子どもの頃からサッカーをしていて、フットサルに転向したと聞きました。大人になってからは、どうしてもスポーツと仕事の両立が難しいことは私にも理解できます。
当社がアスリート雇用に積極的なのは、彼ら・彼女たちに夢を追うことを諦めてほしくないから。武田には、大好きなフットサルを限界までやりきってもらいたいですね。

―現役アスリートを雇用する『デュアルキャリア』は特別なことですか?

いいえ。特別なことではありません。当社にとっては、一般社員を採用するのと全然変わりのないこと。アスリートだからといって雇用条件を変えているわけではなく、調整している箇所といえば、試合を考慮して午後休みを取ったり、平日の有給利用をしているだけ。アスリート雇用は当社が条件を合わせるというより、当社の雇用形態にマッチするアスリートがいるというだけの話ですね。

―これからの武田選手の活躍に期待ですね。

本当に期待しています。彼はフットサルでもビジネスでもプロ。ムードメーカーとして周りを巻き込むことに、武田は本当に優れているんです。どんな時も元気な笑顔で、仕事でも結果を出してくれています。広島での仕事が広がっていますが、彼の功績によることが大きい。これからもフットサルと仕事の両立を頑張ってほしいですね。
デュアルキャリアを、これからどう両立していくかは本人次第。当社は様々な人材が活躍できる環境をつくり続けます。