アスリートインタビュー

辻川美乃利選手(陸上競技・円盤投げ)

株式会社内田洋行所属

こんにちは!渡邉ひかるです。
紹介でつながる『アスリートリレーインタビュー』
今回は、前回の中野瞳選手よりご紹介いただいた辻川美乃利選手にインタビューさせていただきました!

辻川美乃利選手
株式会社 内田洋行
陸上競技(円盤投げ)

プロフィール

筑波大学、同大学院を卒業後、株式会社内田洋行へ2020年に入社。
現在は社会人2年目。
株式会社内田洋行では高等教育事業部西日本営業部に所属し営業のサポートを行っています。

戦績

国内の主な戦績
2017年
第101回日本陸上競技選手権 優勝(51m27)
第86回日本学生陸上競技対校選手権大会 優勝(52m56)

2018年
第102回日本陸上競技選手権 準優勝(50m62)

2019年
第103回日本陸上競技選手権 優勝(51m42)
第74回国民体育大会 優勝(52m79)

2020年
第68回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会 優勝(52m63)
第104回日本陸上競技選手権大会 準優勝(51m62)

2021年
第105回日本陸上競技選手権大会 準優勝(52m09)
第68回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会優勝(53m26)

国外の主な戦績
2018 Mokpo International Invention Throwing Athletics Meeting 優勝(51m20)
2019 Mokpo International Invention Throwing Athletics Meeting 優勝(54m05)

インタビュー

Q:普段のスケジュールを簡単に教えてください。

平日5日間のうち、4日間勤務しています。内訳としては、3日間は5時間勤務(9:00~14:00まで勤務後、練習)、1日はフルタイム勤務、1日は終日練習(2部練習)という形です。レスト日が平日と休日に週2日あるので、平日レストの日にフルタイム勤務を入れている形になります。

Q:卒業後のキャリアを『デュアルキャリア』に決めたきっかけはありますか?

私はJOCが運営している「アスナビ」にサポートしていただいて就職先を決めました。アスナビにエントリーする方は、エントリーシートを提出する際、希望の勤務形態を記載し、入社が決まってから最終調整をするのが一般的だと思います。ですが私の場合はセカンドキャリアを見据え、希望を出す段階で練習以外の時間はできる限り働きたいとお願いしました。
『デュアルキャリア』というスタイルは、研究をしながら練習をしていた大学院での活動時間とあまり変わらず、そのリズムが自分に合っていると思います。

私は学生時代に、将来競技を引退したあとで、そこから新入社員のように業務に携わり始めるということに漠然とした不安を感じていました。
競技をしてきた時間以上に、今後の人生において働く時間は長くなります。将来について考える中で、社会人アスリートとして限られた時間の中ではあるものの、社会人としてふさわしい時間管理術を身に付け、業務内容を理解したうえで働くことに慣れたかったので、欲張りに競技をしながら働ける環境をと思い就活をしていました。今の会社に出会えたのは、縁に恵まれているなと思います。

Q:入社したのはどんな会社ですか?

当社は、大学や小中学校などの教育機関、自治体、民間企業等で活用する情報システムや施設内の環境構築を行い、お客様の学び方や働き方の変革をご支援する商社です。
私自身大学院で保健科教育について学んでいたため、教育を支える仕事がしたいという思いがあり、こちらに入社を決めました。

辻川選手の所属先である株式会社内田洋行様の詳細はこちらです!
https://www.uchida.co.jp/

Q:現在はどういったお仕事をされていますか?

今は営業職のある部署にいます。ただ、14時までしか社内におらず、練習で連絡が取れなくなってしまうとお客様に迷惑がかかってしまうので、営業として担当顧客を持つのではなく、営業のサポート的な役割として、見積書や提案書の作成、営業の方から依頼された情報収集などの業務を行っています。営業の方々は、皆さん複数のお客様を担当し、日々飛び回っています。そうした皆さんのサポートをするのが主な役割です。

デュアルキャリアについて

私自身もデュアルキャリアは、競技だけでなく仕事についても考えることで色んな刺激をうけ、良い意味で気持ちの切り替えにもつながっていると思っています。そこで、辻川さんにデュアルキャリアについてもっと聞いてみました。

Q:辻川さんはデュアルキャリアをしていて良かったと思うことはありますか?

私も仕事と競技の両立をすることで良い刺激をもらえています。競技だけをしている場合、練習をしている時間以外に自由な時間が多くなり、競技について必要以上に考えすぎることで悪い方向に思考がめぐったり、頭の中でぐるぐると悩んだりすることもあると思います。たくさん考えることが必要な時もありますが、デュアルキャリアをすることでそれが長くなりすぎず、うまくメリハリをつけて行動、気持ちの切り替えができています。また、社会人として働いてみることで競技者とは違った立場を感じられるのもとても良いことだと思います。

ようやく仕事と競技を両立する生活にも慣れてきて、ウエイトトレーニングの数値も自己ベストを更新できたり、コロナで崩れていた「自分のやりたい練習」をこなせたり、良い波に乗れるようになってきたという手ごたえはあります。

社会人での変化

Q:社会人になってアップデートされた部分はありますか?

良い意味で、周りにあまり左右されなくなったと思います。以前は頼まれたら断れないタイプで、「やります!」って全部依頼を受けて結局キャパオーバーになってしまうといったようなことがよくありました。練習でも、所属している大学の学生と一緒に練習していて「自分の練習と並行して後輩も見てあげよう」と思い、結果的に自分に対して目を向ける時間が短くなってしまう・・・なんてこともありました。
現在はコーチとマンツーマンで練習するようになり、自分と向き合う時間が増えたので周りと比べたりせず「自分は自分なんや」と常に自分に目を向けて集中して練習できるようになりました。

会社でも、特殊な働き方をしていることも含め、他人にどう見られているか、最初は不安に感じることもありましたが、社員の皆さんにもご理解いただき、温かく応援いただくことで、どうあるべきかなど以前は考えてしまっていましたが、今はそれも無くなってきて、私らしく頑張ろうと良い意味で図太くなったと思います。

Q:「周りに左右されなくなった」というきっかけや理由はありますか?

そこで悩んでも何も解決されることはない、時間は有限であるのだから限られた時間を有効に活用するためにも開き直ろうと思えたからです。
企業に所属して競技を続ける中で、「周りの実業団選手のように練習時間だけでなく休養時間も多く取るべきか・・・」とか、「社員の方にまた今日も早く帰ってると思われていないかな・・・」と考えてしまうこともあるかもしれませんが、私の場合は私のことを応援してくれるたくさんの方々がいて、その方々に試合の結果報告をしたときに「良かったね」「頑張ったね!」という言葉をいただき、それらの言葉に助けられて、そう思えるようになりました。
私の存在で少しでも会社の雰囲気が明るくなればと思いますし、それがアスリート社員としての存在意義の1つではないかと思います。マスコットのような存在になれたらと思っています!

Q:会社の方とはどういったコミュニケーションを取っているのですか?

特別なことはしていませんが、挨拶をしっかりしたり、仕事に余裕があるときは「手伝えることはありませんか?」と声をかけたり、常に笑顔でいることなどは心掛けています。
実際に社員の方々と関わる時間が多いだけ、身近な存在に感じてもらうことができ応援してもらえたり、いざというときに味方になってくれたりすると思います。
仕事のことだけでなく、「最近〇〇キロ自己ベスト更新しました!」とか「こんな練習して上手くいったんです!」とか話して距離を縮めるのも大事かなと思います。

Q:普段心掛けていることはありますか?

仕事と競技をどちらも言い訳にしないということです。
例えば仕事で疲れてしまい、練習に身が入らない、もしくはその逆(練習で疲れてしまい仕事に身が入らない)といったことにはならないように、それを互いに言い訳にするようなことは絶対に無いように心がけています。むしろ自分で競技も仕事も両方頑張りたいと決めたのだから、責任をもってどちらかを言い訳にして甘えてはならないと考えています。

今の課題との向き合い方

Q:今、課題に感じていることはありますか?

ごくたまに仕事と練習の切り替えがまだ上手にできない時があることです。
どうしても仕事で疲れた日は、「これから練習か~」と思う時もあります。そういった時は、ウォーミングアップを長くして気持ちを整理したり、セット数だけでなく重量や回数なども全て事前に決めておき、「今日はこのメニューだけをこなす」って気合いを入れてみたり、逆に集中力持たないと感じたらいつもは質を重視してやるメニューを回数を増やして量を重視するメニューに変更してみたり・・・気持ちや仕事とのバランスを臨機応変に対応しながら継続して練習に取り組んでいます。
もちろんいつもそのような状態ではありませんが、たまにそのような状態になることがあり、気持ちを奮い立たせて練習をしています。仕事と競技の両立は難しいと感じることもありますね。上手く切り替える方法をご存知の方はぜひ教えていただきたいです!私はチョコレートなどを食べることで練習スイッチを入れることもあります。

Q:大変な時も工夫して練習に取り組んでいるんですね!

ポジティブに考える性格ではありますが、大学を卒業するときに顧問の先生に「どこのどんな環境であっても結局強くなるのは自分次第だよ」と言われたことがずっと頭に残っています。大学を拠点に練習をしていたから成績が出せたのではなく、どんな環境でも強くなることができるよと言っていただきました。出身大学の筑波から出ることを言い訳には絶対できないし、「自分と向き合って強くなるのは自分なんだから」と常に考えています。

Q:自分を奮い立たせて頑張れるのはなぜですか?

目標がぶれないということもですが、企業に所属してアスリートとして競技生活を行うことってそういうことかなって思う部分もあるからです。
競技は好きでやってますし、もちろん楽しくて続けていますが、それ以上に企業に所属しながら競技を続けられる恵まれた環境をいただけたことに対しては、「会社や社会から私が求められていることは何か」と常に問い続ける必要があるのではないかと考えています。アスリート社員としての存在意義を考え続けることで、責任ある行動につながっていくのではないかと感じています。

引退後のキャリア・今後の目標

Q:競技引退後のキャリアについてはどのように考えていますか?

引退後は社業に専念したいと思っています。
よく、「競技をするために入社した」というパターンがあると思いますが、私の場合は「引退後もこの仕事に関わりたい」という想いから入社を決めました。教育を支えるような仕事がしたいと以前から考えていたので、アスナビの説明会でご挨拶したあと、私からアプローチしました。個別に説明会は実施してもらいましたが、アスリート採用としての特別採用ではなく、適性検査や面接など一般の就活生と同じフローを踏んで、無事内定をいただきました。
セカンドキャリアでもずっと働き続けることを前提として入社しましたので、引退後は今の仕事で活躍したいと思っています。

Q:最後に、今後の目標を教えてください!

陸上では、日本代表として世界大会に出ることです。やっぱり世界大会に出ている選手はかっこいいですし、あんな風にキラキラした選手になりたいなと思います。
社会人としては、実際に営業に出ているわけではないので、営業さんたちを支える縁の下の力持ち的な存在になりたいと強く思います。

取材後記

今回は株式会社内田洋行の辻川美乃利選手にお話を伺いました。
日本代表という高い目標を掲げながらも、セカンドキャリアを見据え競技と仕事の両立をしている辻川さん。競技のみの生活よりも自分に合ったスタイルで競技でも仕事でも活躍されています!本当にかっこいいです!
「仕事が競技に影響してしまうのではないか・・・」
「引退後のキャリアが不安だけどまだ競技を続けたい・・・」
など、様々な道を模索している方は、辻川さんのように両立することで解決できることもあるかもしれません。
取材にご協力いただきありがとうございました✨

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