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元・Jリーガーが夢見るアスリートとスポーツの未来――
【前編】では、プロサッカー選手になったもののおよそ4年で引退してセカンドキャリアに進んだ鹿山拓真さんに、プロ選手時代や引退に至る思いを語ってもらいましたが、【後編】では、今どんな生活をしているのか? 苦労やヤリガイなどをインタビュー。
今後の夢や目標、スポーツのある社会に対する希望についても、じっくり語っていただきました。
仕事・勉強・サッカーで盛りだくさん
―では引退後、どんな毎日を過ごしているのか、教えていただけますか?
今の一週間でお話しますと、月曜日は、マイナビの長崎支社に出勤し、定時まで仕事をします。
帰宅して家族と過ごし、21時くらいからは大学院から出された課題に取り組みます。
火曜日は、現状は在宅勤務なので、自宅で業務にあたることに。
退勤後の19時40分から1時間半、大学院のオンライン授業を受けて、終わったら復習します。
そして水曜日、6時半の新幹線に乗ってお昼過ぎには大阪へ到着。
13時からの授業、ゼミと参加し、夕方には再び新幹線に乗り、電車内でもオンデマンド授業を受けつつ長崎に帰宅。
家に着くのは23時くらいでしょうか。
―日帰りで大阪の大学院まで通われているんですか、ハードですね……。
確かに慌ただしいかも知れません。
木曜日、金曜日はともに長崎支社に出勤して定時まで通常業務を行い、帰宅後、21時過ぎから勉強というサイクルです。
そして土曜日、基本的には“完全オフ”としています。
勉強したり、身体を動かしたりもしますが、家族との時間に充てて、
外食に行ったりもしていますね。
―そして日曜日、社会人のサッカーチームでプレーをしているとか?
そうなんです。
学生時代の同級生に誘われたこともあり、実業団チーム『三菱重工長崎SC』に加入しています。
とはいえ、無理ができる身体ではないため「体調と相談しつつ、できる範囲で」という状況です。
なかなか身体を追い込むようなトレーニングをするわけにもいきませんので。
正直、時間がある時に走ったり、ケアを行ったりするくらいですね。
―プライベートでは、奥様とお子様と過ごされる時間が多いんですね。
子供はまだ1歳ですし、妻も仕事をしていますから、できる範囲のことはしています。
このセカンドキャリアは家族の理解があってこそ。
本当に有難く感じていますし、土曜日など仕事や学業から切り離された時間があることは、僕にとって大切な瞬間。
家族という存在は大きな大きなモチベーションになっています。
アスリートだったという「強み」
―では、オフィスワーカーにもなって気づいたことはありますか?
今までと全く違う世界ですから新鮮さを感じますし、長崎支社のメンバーの働き方には、驚きを超えて尊敬の気持ちばかりです。
自社の社員をこのように言うのも手前味噌ですが……。
とにかく“ONとOFFの切り替え”が皆、すごく上手なんです。
加えて勉強熱心ですし、商談のロープレなど真剣に取り組む他部署の先輩方を見ると、自分の気持ちもより一層引き締まります。
―その中で何か学んだこと、意識していることはありますか?
焦り過ぎず「自分ができること」に真摯に取り組むことでしょうか。
それと信頼を得るためには、相手にしっかりと“表現”することが大事であると感じています。
振り返ればサッカーでも、声や話し方、ジェスチャーで仲間に意図を伝えます。
形は違えども、相手に感じてもらうのを待つのではなく、自ら発信する大切さを実感しているところです。
―プロ時代の経験が活きているんですね。他にアスリートならではの強みは感じていますか?
アスリートだったからか、僕自身のキャリアで得られたスキルかはわかりませんが、目標設定をキチンと行い、
「課題を見つける→クリアする」サイクルを繰り返すことは、そのまま今の仕事にも当てはまります。
それと多くの時間を一つの事に費やし、努力した経験は身を助けると言いますか、
「努力できるスキル」を持っているという自信は大きいですね。
―アスリートとして頑張ってきたことを、自信に変えていいわけですね。
そう思います。
PC作業が得意なアスリートって少ないかも知れませんが、別のスキルは持っているわけです。
目標を何も設定しないアスリートっていないと思いますし、計画を立てて行動する事は、まさにビジネスの基本。
機動力とか根性といった部分だけが、アスリートのアドバンテージではないと思っています。
仕事も学業も、まだ道半ば――
―では今、仕事と学業を両立して「満足感」はどこに?
大学院で指導してくださる先生はスポーツマネジメントの学問分野で著名な方々。
新たな気づきの連続ですし、勉強は難しくもありますが、自分の身になっていると感じます。
また、同級生には地域のスポーツクラブ運営に携わってきた方や、違う競技の元プロ選手もいます。
彼らと触れ合うことで、様々な刺激を得られている点は、有難く感じています。
仕事一本でしたら、決して出会うことはできなかったですから……。
―一方、仕事に関してはどんな「満足感」を得られていますか?
先輩や同僚から得る刺激は先ほどお話しましたが、『マイナビアスリートキャリア』の一員として、
デュアルキャリアやセカンドキャリアのサポートができるのは、感慨深いものがあります。
“アスリートの味方”でいられる事への喜びがありますし、
競技一本で進んできた方は特に“社会に出る怖さ”があるかも知れませんが、
そこは当社のサービスを信じて飛び込んで欲しいです。
―お忙しそうですが、毎日が充実しているのですね。
そうですね。
もちろん、まだまだ学びの日々は続きますし、仕事に関してもより成果を出せるように努力しなければならないと感じています。
正直に言えば「ようやく少し慣れてきたかな?」という段階ですので。
もっとスキルを磨き、先輩方に頼ることなく“アスリートの味方”でいられるようになりたいです。
アスリートにもっと「選択肢」を
―では、今後の鹿山さんの夢があれば、教えていただけますか?
まずは自分自身のキャリアを充実させること。
スポーツマネジメントについてしっかり勉強し、アスリートの皆さんのキャリアサポートを実現し、
身体に無理のない範囲でサッカーも楽しむ、ということですね。
そして遠い未来の話になるかも知れませんが、「スポーツ×経営」という領域の人材不足を何らかの形で補う貢献ができれば嬉しく思います。
―具体的には、どんな目標を掲げているんですか?
今、スポーツに関わるというと、プレーヤーでもコーチでも「する側」になるか、「観る側」になるかの選択肢ばかりだと思うんです。
ここにスポーツを“させる側”“支える側”の選択肢が充実すればいいなと思うんです。
アスリートもそうですし、スポーツというジャンル全般としてマネジメントやビジネス視点って弱いですよね。
仕事を通じて「アスリートを支える企業様」にもお会いしますが、やはりまだ少数派だと実感します。
―そうすると、今の“学び”も“仕事”も発展させていければ……。
そうですね。
『マイナビアスリートキャリア』にも、まだまだ伸びしろがあると思いますし、僕の場合はメジャーと呼ばれるスポーツでしたが、
マイナースポーツで活路を見出そうとしている方にも、様々な可能性を提供できるようになると思うんです。
引退後、指導者にならない/なれない限り、競技から分断されてしまうというのはもったいないですよね。
―素敵な未来像ですね、「アスリートにもっと多くの選択肢を」――
その発想に至った原点は、きっと学生時代から目標設定を心がけて、考える時間を取っていたことだと思うんです。
学生から社会人になろうとしているアスリート、競技キャリアの岐路に立ったアスリートには、視野を広く持って様々な選択肢を考えてもらいたいですし、
アスリートを目指す方にも、同じメッセージを伝えたいです。
―では最後に、鹿山さんにとって“スポーツの価値”とは何ですか?
言葉にしづらいのですが、多くの人に喜びや感動、時には悲しみ、悔しさを届けるのがスポーツ。
社会構造が変わり、AIなどの発達によって、もし人々の持てる“余暇”が増えたら、スポーツの立ち位置って今以上に大きくなると思うんです。
その時、多くの人がスポーツの中で様々な選択肢を“自ら選べる”ようになっていたら最高ですね。
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鹿山 拓真
小榊サッカースポーツ少年団、長崎南山中学校、長崎南山高校を経て、東海学園大学へ進学。
大学3年次の2018年3月7日、2019年からV・ファーレン長崎へ加入することで仮契約し、同月29日に特別指定選手に承認され、長崎に選手登録された。
同年4月4日のルヴァンカップ・グループステージ第3節サガン鳥栖戦で、公式戦初出場・初得点を記録した。
2021年7月24日、カターレ富山へ期限付き移籍。シーズン終了後に富山へ完全移籍。
2022年11月28日、現役引退を発表。
2023年株式会社マイナビ アスリートキャリア事業部に入社。同年、大阪体育大学大学院に入学。
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