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仕事と距離を置いて選んだプロの道とは―
スポーツ経験は、スポーツだけに還元されるものではなく、社会で生き抜くチカラに変換されていきます。
過去にスポーツをしていた、または現在もあるスポーツで活躍している人は、どのようにキャリアを選択して今、輝いているのか。
アスリート自身の経験談から「次の一歩」のヒントを得ていきます。
小林さんとは?
ー小林 僚生(こばやし りょうせい)さん
スカッシュクラブに通っていた父の影響で小学1年生の頃、姉と一緒にスカッシュを始める。2012年には最年少(当時)全日本チャンピオンに。最高世界ランクは55位。
現職はワインの輸入業者に勤務。フランスに拠点を置き、生産者とのコミュニケーションや買い付けをメインで行っている。
―経歴
2002年 スカッシュと出会う
2012年 最年少(当時)で日本チャンピオンに
2021年 日本人男子過去最高世界ランク55位に
2021年 現役引退
スポーツ経験と今
|小林さんの今までのスポーツ経験を教えてください。
小学生の頃はスカッシュの他に、同級生と習い事でサッカーと水泳をやっていました。自分的にはスカッシュの楽しさが勝っていたので、他のスポーツに関しては皆がやっているからやる、みたいな感覚が強かったです(笑)。結局スカッシュ以外は1年で辞めて、もうそれからずっとスカッシュ一筋でやっています。
|現在の仕事はどのようなことをしていますか?
現在は自然派ワインに特化した輸入業者に勤務しています。
スカッシュクラブで出会った知人の中に経営者がいて、その方に大人になったタイミングで一緒に仕事しようよと誘っていただいたことがきっかけで今に至ります。
会社自体は東京が本拠地ですが、私はフランスで生産者さんとコミュニケーションを取って、買い付けを行っています。
「分析力」が自分自身を強くしたスカッシュ
|スカッシュとの出会いを教えてください
元々父が趣味の一環としてスカッシュクラブに通っていて、そこに姉と一緒に通い始めたのがきっかけです。姉は運動神経がとても良かったのですが、一方で自分はアスリート的な体格に恵まれたわけでもなくて、運動神経もそこまで良くなかったんです。それでも楽しいと思えたのがスカッシュだったんですよね。今までずっと競技を続けていますが、一度も辞めたいと思った瞬間はないですね。
|スカッシュとはどのような競技でしょうか?
スカッシュはイギリスのロンドンで生まれたスポーツです。4面を壁で囲まれたコートの中で、ゴムボールを相手と交互に打ち合います。よく富裕層の方々が趣味でやられているイメージがあると言われますが、実際のところ競技に必要な用具も少ないですし、誰でも始めやすいスポーツです。また、世界一健康的なスポーツとも言われていて、運動量はテニスで消費するカロリーの約2倍と言われています。バランスよく全身を使うスポーツなので、筋肉も付きますし、汗もしっかりかけるリフレッシュに最適なスポーツです。
(詳しくはこちら:https://squash.or.jp/squash/)
|スカッシュの魅力を教えてください!
運動神経関係なく練習を重ねれば上達できるところですかね。スカッシュは相手と対面でプレーするわけではないので、相手が何をするか技量的な面だけではなく、戦術的に視界以上のことを読む必要があります。フィジカルや運動神経というよりかは、相手の性格や特徴を深く考えることができる選手ほど強いです。
|なるほど。小林さん自身がスカッシュを極めていく中で特に意識した部分もそういった性格や特徴の”分析”だったのですね。
まさにそうですね。自分自身で体現している部分もあると思います。
私は冒頭にもお伝えしたように体格も運動神経も特別良くなかったので、どうやったら上手くできるようになるか、観察することを意識的に行っていました。学校終わりに姉と一緒にスカッシュクラブで他の人のプレーを観察しては、社会人に練習に付き合ってもらって、を繰り返しているうちに観察力や分析力は養うことができたと思っています。とにかく実践あるのみですね。スカッシュ自体大会に年齢制限はありませんし、大人子供関係なく積極的に練習や試合にでることが成長の近道だと思います。
今の自分だからできること。プロとしてフランスで過ごした3年間
|現職に就く前にプロのスカッシュ選手として活躍された3年間があるとお聞きしました。何をきっかけにそういったキャリアを歩もうと決断されたのですか?
元々前職は物流関連の仕事をしていました。大学もアメリカにいたので、そのままアメリカで就活をして現地の企業に就職しました。入社し、やりがいもありましたが、今、自分がやれることを最大限にやっていきたいという想いが出てきました。そこから今の自分だからこそできることは何か、と改めて考えたときに「スカッシュのプロに挑戦する」という選択肢が出てきました。スカッシュのプロだったら体力的にも若い時にしかできないですし、何より自分が納得して心の底からやりたいと思えたので、24歳の時にスカッシュでプロとしてやっていくことに決めました。
|そうだったのですね。プロのスカッシュ選手として過ごした期間、仕事は?
一切やっていません。僕の場合プロを始めるにはタイミングが遅かったので、プロとしての選手人生は3年間と決めていました。その期間は競技に専念していくために仕事は全くやっていません。大会での目標順位や出場を目標とした大会など具体的なゴールを定めつつ、とにかく楽しく、全力でスカッシュと向き合ってどれだけ強くなれるかを重視していました。
|プロとしてスカッシュをやっていく中で目標を達成するために具体的にどんなことを実施しましたか?
最初から頑張りすぎても怪我が心配ではあったので、まずは現役時代まで競技レベルを最短で戻すことを重視していました。プロで稼ぐことは現実的に難しい年齢でしたし、プロでの経験を次にどんなことに活かせるか、常に先のことを見据えながら日々練習に励んでいましたね。
|プロの3年間で小林さんが得られたものを教えてください。
1つのことを全力で楽しみながら得られる人生の充実感は、この3年間だからこそ得られたものですね。この期間は先ほどもお伝えしたように仕事とは完全に距離を置いていたので、“お金を稼ぐこと”とは無縁の生活でしたが、仕事がメインになっている生活をしていた時よりも自分自身の幸福度は高かったです。今回のこの経験を経て、自分がこの先どういう生活をしていきたいか、何を大切にしたいかがはっきり可視化できるようになったきっかけになったと思います。
プロで培った時間を活かす次のステップとは
|人生の充実感を味わえた3年間を経て、未経験のワインの世界に踏み込んだのですね。
はい。抵抗は特になく踏み込んでいきました(笑)。競技を通して習得したものを仕事でも活かせているなと日々実感しています。
例えばワインのテイスティングをするときは感覚を研ぎ澄ませる必要があり、これはスカッシュで培った競技前や肝心な時に瞬間的に上げる集中力やアドレナリンと似たようなものを感じています。
|プロ生活では“人生の充実感”を得られたとのことですが、現職で得られたことは何ですか?
自分には持っていない価値観を得ることができたと思います。
私が扱っているのは自然派ワインでして、自然派ワインの生産者は自分の感覚を頼って自分に必要な量しかワインを作らないんです。フランスの自然が好きで、その延長線上にワインがあって、それを好んで楽しむ私たちのような消費者がいる、という考え方なんですよね。利益を優先的に考えるとかではなく、“自分たちが何を大切にしたいか”を大事にされていて、家族と身内でとにかくゆっくり幸せな時間を過ごすことに重きを置いている部分に関しては特にこれまでの自分が持っていた考え方とギャップがあり、これに気がつくことができて本当に良かったと感じています。
また、今年の冬からは拠点を東京に移し、東京では買い付けたワインを売り込む仕事をメインで担当していきます。フランスで学んだシンプルな人生観は、東京に移っても大事にしていきたいと思っています。
スポーツがもたらしてくれたチカラと人生の価値
|小林さんがスカッシュを通して得た“スポーツの力”が活きているなと感じる瞬間を教えてください。
シミュレーション力でしょうか。現役時代、目標に対してどんな練習が必要で、どんな相手と戦うことが目標達成において最も大事なのかは常に意識していました。シミュレーションに対しての振り返りも頭の中でできるように、情報は常に整理しています。
|逆算する力は大事ですよね。仕事でも同様に活かせそうです。
そうですね。毎年ワインの生産者さんを確保する獲得競争があるのですが、どうしたら上手く良い生産者さんと出会えるか、そのためのアクションやアプローチ方法は逆算しながら動けるように意識しています。また、ワインはとても繊細なので、自分自身もワインと真正面で向き合えるようにテイスティングの時は万全なコンディションで挑めるように工夫しています。
|小林さんが考える「スポーツの価値」を教えてください!
「健康維持」と「人脈」です。
スポーツをすることでフィジカル的な健康を保てることもそうですが、仕事やプライベートと一旦切り離せるツールになるので、心の健康を保つことができると思っています。
また、私の場合スカッシュを通して出会った人にお誘いいただいて、現職で働くことができているので、人脈の面でも人生において大きなきっかけや価値をもたらすものだと思っています。
小林さんが見据えるスカッシュ界の今後
|今後のスカッシュ界に期待することを教えてください。
国によって普及が大きく変わってくるので一概には言えないのですが、冒頭の方でも触れたように、どなたでも手を出しやすいスポーツだと思っています。用具もラケットとボールと靴だけ用意すればできるので、そこに身近さや手軽さを感じる人が増えて、それに伴って競技人口が増加してくれたら将来的にも嬉しいですね。スカッシュ界で日本勢が活躍できるような未来がくればいいなと思っています。
|小林さんご自身の今後の展望は?
競技面では、プロは引退しているものの、スカッシュは今後も生涯スポーツとして続けていきたいと思っています。今まで広げてきた人脈を活かしつつ、一人でも多くの方に競技の魅力を伝えられるように、日本のスカッシュ界に恩返しするためのアクションを起こせたらと思っています。
また、仕事面では兼ねてから経営者になりたいという夢があるので、仕事に向き合いながら楽しく人生を過ごせるようにしていきたいと思っています。
最後に読者にメッセージ
スポーツによって何を得られたか、自分が今後どんな生活を送りたいか、どんな人間になりたいかは軸として持っておくべきだと思っています。将来を見据えてアクションを起こすことが、自分の未来の可能性を広げていくことに繋がると思うので、恐れずに色々なことを挑戦してほしいです。失敗は失敗ではないです。必ず学びに繋がります。何事もトライしていきましょう!
編集後記
一度は仕事から離れ、スカッシュという競技をプロの世界で挑戦することで、人生の充実感を得ることができた小林さん。スカッシュという競技の輪が小林さんの人生をフレキシブルにしたのだと感じました。まだまだ叶えたい自身の目標に向かって走り続けている小林さんの人生も要注目です。
インタビューにご協力いただき、有難うございました。
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